私らしく!何事にも本気で生きたい!

どこかで共感してくれる人がいてくれたら

私はやっぱり人が好き ~講師 1年生~

3年前まで、ある専門学校で就職指導の非常勤講師をしていた。

私が専門とする職種の学校で2年制と1年制のコースがあり、全学生の指導にあたっていた。

何年も務めたこの学校が好きだったが、残念ながらその学生たちの卒業を最後に閉校が決まっていた。

しかし、私は、その学校から最後に最高の贈り物をもらった。

 

 

1年制コースのあるクラスには、さまざまな年齢の学生が入学してきた。

高校を卒業したばかりの18歳、大学卒業してからの22歳、社会人学生20代から30代、中国人留学生など男女計38名。

18歳の学生たちは、良くも悪くも元気で、遅刻欠席、課題忘れ、再試験も多い。

中でも男子学生N君は、これらすべてにおいてトップであり、いわゆる先生方にとっては問題児であった。

 

人は他人の欠点を探して、そこばかりを見てくる。本当にくだらないことをする。

人には誰でも他人より優れているところが必ずあるのだ。なぜそれを見つけて評価しないのだろう。

 

このN君は、勉強は嫌い、課題もやらない、授業中は睡眠学習。確かに学生としての見た目の評価は悪い。

けれど彼には人の話を素直に聞く、そしてできることをやってみる、わからないことはきちんと聞くというところがある。私の評価はここだった。

 

子供のように思うかもしれないが、これはいくつになっても人間が成長する上でとても大切なことである。この姿勢がなければ、人は成長できない。大人になっていくにつれて理屈で物を考えたり、プライドや経験が邪魔したり、価値観が出来上がってくると素直に受け入れられなかったりする。

 

ところで、学校の敷地内に外で話しができる場所がある。やんちゃ坊主たちもよく集まる。

私は、僅かな休み時間でもリフレッシュのため外に出るので、結構な頻度で利用している。職員室が嫌いなのもある。

 

ある日私はこのN君と二人で話す機会があった。彼の過去の話、私生活、将来のことを話した。

予想した通り中学生からやんちゃなことをはじめていた。でもそれには理由があった。

母親の精神障害により、彼は神奈川から島根の全寮制の高校に通わされていた。

家庭内の事情、何をやっても母親から責められたことや自分の中高校時代の話を明るく話すこの彼の強さはどこから来ているのか考えた。

「Nは、お母さんがとても大好きなんだね。」

「・・・」

「それは恥ずかしいことじゃないよ むしろとても優しくてかっこいいやつだと思う」

「うん 大好きだよ!」

「なんだよー いいやつじゃーん!そうやって言えるって素敵なことよ!」

「でも、大好きなのに、どうしたらいいかわかんないんだよね。鼻唄を歌うだけでうるさいとか言われてさ 話もできないし」

「そうだね ずっと甘えたかったよねー」

「よくわかんないけどねー」

「まだ18だけどさ、来年は就職でしょう、社会人になっていくわけじゃん。

 だからさー、今度はNが大人になって、お母さんを守ってあげる番なんだよー」

「どうやってさー」

「お母さんをさ そのままのお母さんを受け止めてあげるんだよー 最初は難しいかもしれないけど、あなたならできるよー 包んであげるの そしたらいつかお母さんにNの気持ちが伝わるよ」

「わかんねー」

「Nの気持ちは私が受け止めた!だからあなたはお母さんをたのんだよー」

そのまま二人で空見てたっけ。

 

それから、人の意見を素直に聴く、認める、受け入れることは、自分をしっかり持つ強さと認める勇気があれば、自己を分析し、成長に繋げていくことができる、だからその素直さは一生変わらず持ち続けるよう伝えた。

 

その後、彼は超有名企業でのインターンシップでも上司に認められて、学生にも関わらずいろいろ難しい仕事も任されるようになった。そして、就職も決まった。

 

私と彼とあともう二人の男子学生が加わり、4人で放課後いろいろ話すようになった。

 

その1人 A君は、ある2つの学校で迷っていて、結果この学校を選んだらしい。そのもう1つの学校でも非常勤講師をしている私は、どちらにしても彼に会う運命だった。

A君は言葉にできないほどの素晴らしい笑顔をする。敵を作らないとても優しい心の持ち主だった。そのため、自己を主張する強さがないので、就職の面接がとても困難だった。私は小さいけれど彼に合ったホテルを探して、就職試験をうけるように勧めた。そして内定をもらった。

就職してから、彼の職場を一度訪れたことがある。

上司がわざわざ私に挨拶に来てくれた。

「こんな素晴らしい人材を紹介してくださってありがとうございます。彼は本当に頑張って仕事をしてくれてお客様にかわいがられています」と。

 

卒業式の日、この3人が私のところに来て言った。

「先生の恩ははかり知れない。今はまだ何も返せないけど、俺ら頑張るから。おばあちゃんになったら、俺たちに任せて!面倒みるから!」

「おばあちゃんまで待たせるなよー!足腰立つうちに海外に連れてけー!」

「まかせろー」

 

彼らは私の誇りである。私は一生彼らの味方でいたい。

 

卒業してから、母の日が近づいてくると、私は必ずN君に

「母の日だぞ!忘れるなよー」と毎年知らせている。

「今年はどうしよー!」「去年なんだっけー?」という会話を楽しんでいる。

 

卒業して数か月後、4人の集合がかかった。

昼から集まって優雅なランチをして、バカ話をして、夜まで騒ぐ。

いつしか定例会となり、3年経った今でも2,3か月に一度この定例会が開かれている。

You made me realize what I want to do in the future.

I'm so proud of you...

 

私がやりたいこと ヤンクミになる(笑)

 

Eric Clapton - Tears In Heaven (subtitulado)(Official Video)